夕飯を終えてお皿を洗い終えた瞬間、タイミングを見計らっていたかの様に、ケータイの着信音が鳴る

ディスプレイは非通知で、出ようか迷った挙げ句、ゆっくりとボタンを押した

「…はい」

電話の向こうが誰なのか、警戒しながら声を出す

『もしもし、岡本りりかさんのお電話番号でお間違い無いでしょうか』

相手は男性で、機械的な話し方だ

…こんな人、あの人しかいない…

「はい…そうです」

『お久しぶりでございます、りりか様
私(ワタクシ)、篠原(シノハラ)でございます』

「…お久しぶりです…」

テレビを見て楽しんでいる翔くんに気づかれないように、静かにキッチンを出て寝室へ

手に汗がじわりと滲み、顔が自然と曇る

『会長からお呼びするようにと、申しつかりましたので、連絡した次第でございます』

やっぱり、そうか…

あの人とは、母親のお葬式以来会っていない

もう会う機会などは、ないとばかり思っていた

あちらも、そう思っていたに違いない

なのに何故、私に連絡を今更してきたのだろうか