「すいません…」
「いや、良いんだよ
それくらい言われないと、出来ない奴だから、俺」
そう言った彼は、いったいどんな人なんだろう、と不思議に思った
「あ、名前聞いて無かったね
俺は近藤春輝(コンドウハルキ)」
スッと差し出された手を少し悩み、手に取り微笑み返す
「岡本りりかです」
一瞬、彼が驚いた様に見えたのは、気のせいか…??
「そう…りりかちゃんか
あ、“ちゃん”付けより“さん”付けの方がいい??
ほら、今の若い子って“さん”嫌がるって聞いたから」
え、それどこ情報…??
「ふふっ、どちらでもいいです
そういうの気にしません
呼び捨てでも構いませんよ」
「あ、そう??
…じゃ、呼び捨てでいい??
めんどくさいから」
ニシシと笑う顔はまるで子供みたいだな
そんな中、彼の電話が鳴った
どうやら相手は男性らしく、怒っているようだ
ううん、かなり激怒していて、声が大きくてダダ漏れ…
ケータイを耳から少し離して、彼は適当な返事を返す
そして、通話が終わると、スクッと立って
「ありがとう
俺、部下に説教されちゃったし、行くね」
「はい」
「じゃあ、またどこかで合ったら、このお返しは必ずするから」
いや、そんなのいいです、と断ろうとする前に、近藤さんは去っていった


