「あぁ…大丈夫だよ。気にしないで」
「で、でも…」
もう少し控えめに声を掛けていれば良かったんだ
なんだか、とても悪い気がし、私はそっと彼に手を差し伸べる
「………え」
「掴まってください」
「…………」
私の手を数秒間見つめ、フッと口元を緩め私の手を握る
「ありがとう」
「あ…いえ」
力いっぱい引き上げ、彼が立ち上がると思った以上に服が濡れている
黒いワイシャツは肌にくっつき、それを少ししぼり濡れた髪の毛をかきあげる
な、なんか…とっても悪い気がしてたまらない
「……あ」
そうだ!
カバンからハンカチを取りだし、そっと彼に差し出す
「あの、良かったら…どうぞ」
「……え」
「こんなのしか、ないですけど…」
「そんなことない、助かる…でも、僕より…キミの手のほう濡れてるよ」
「へ?」
ハンカチを受け取り、私が手を差し出した手を握り丁寧に拭いていく
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