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呉羽さんと出会った日の夜、また夢を見た。
いつものように知らない誰かに名前を呼ばれるのではなく、その日は一面、真っ白い世界に私はいた。
なんの音もなくただ白い風景が広がり、足元には沢山の淡い色をした睡蓮の花が咲いてまるで水上を歩いてるようだ。
足を踏みしめる感覚や鼻を惑わす甘い花の香りが物凄くリアルで…夢とは思えないほど
「ここは…どこなんだろう?」
そう呟き、夢の中をいくら彷徨っても景色は変わらなく、美しい景色なのに恐い
そんな恐怖にごくりと息を飲み、しゃがみ込みながら睡蓮の花を触ろうとした時…
「いのり」
「…あ」
また、あの声が聞こえた
「誰…?」
「いのり…ここだよ」
「ここって…」
どこなの?声ばかり聞こえて、姿なんて全然みえない
優しくどこか懐かしいその声は…誰なの?
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