千沙が泣きそうな顔をしていたから、慰めないと駄目だと思った。
安心させたくて抱きしめて、大丈夫だよ、千沙だけが特別なんだよと何度も言った。

それはすべて、本心だったのだけれど。


伝えれば伝えるほど、千沙は頑なになって、怒ったようなそれでいて泣く寸前みたいな顔でこう言った。


しろはいつも嘘ばっかり。信じられない、と。


だって千沙が信じないからじゃないかと言う言葉を飲み込んで、へらりと笑う。
そうしてごめんねと囁いて、「もうしないから」とキスをして、いろんな言葉を飲み込んだ。


こんなごまかし方ばっかじゃいつかパンクする。どこかでそう思ってはいたのだけれど、どうしていいか分からないままに。


いつしか俺を好きだと言わなくなった千沙が、このときだけは俺だけを見て必死に確認してくれるから、あぁなんか歪んでるなぁと思いつつ、安堵してもいたんだ、本当は。


大丈夫、千沙は、俺を捨てたりしない。


その歪みがまさかあんなに千沙を追いこんでいるとは、俺は気が付けていなかったのだ。