そのまま2人の陰は窓からは見えないところに消えていく。

知ってる、そこはしろお気に入りのデートスポットだ。あんまり人に見られないから。でもここにつれてきたの千紗だけなんだよ、俺と千紗の秘密基地ねなんて子どもみたいなことを言ったしろの言葉を、バカなあたしはまだ覚えているのに。


「……止めとけよ」

背を押すみたいにそう言う木原の言葉は、どこまでも当たり前だ。

でも、なのに、あたしはいつもそれをどこまでもどこまでも先延ばしにしている。
しろと2人の幸せなんて、もうずっと前に見切りをつけた。

あるのは惰性と緩やかな熱の名残だけなのに。



あたしが言ってもしろは聞かない。
しろは本当に反省してるって顔をして、その裏で「ちょろいな」って舌でも出していたんだろうか。

藤井先輩も、三浦さんも美人だ。とてもきれい。
あたしとは違う。
でもじゃあなんで、しろはあたしを選んだのって。

美人でもなんでもないあたしを選んだのは、容姿じゃなくてあたし自身を選んだって、あたしは特別なんだよねってそう思いたかったし、縋っていたかった。


でもそれも、ここまで短期間で続くと、慣れた慣れたといくら思っていても、言い聞かせていても、ちょっとクル。


気がかりそうにあたしを見守ってくれている木原に何も返すことが出来ないまま、あたしはそっとすべてを追い出すように目を閉じた。