炎の着物を、ほんの少しだけ、傷つける。


その筈だった。


俺は、炎に向かって鋭く尖った爪を振りかざした。


礼孝も本能で、咄嗟に動いてしまったんだと思う。


さすが、伊達に陰陽師を名乗っている訳じゃなかった。


炎の前に躍り出て、背中越しに左手で炎を庇い、既に右手で九字を唱える形をとっている。


「早時。炎に手を出したら、キミを祓いますよ。」


俺の目の前で炎を守る姿は、さっきまで自信無げにしていた礼孝ではなかった。


本領発揮といった所か…。