俺は、大きくため息をついた。


「俺が炎の前から消えれば、丸く収まる話だよ。
悩む必要なんてない。
まっ、がんばって炎を振り向かせるんだな。
世話になった。」


俺は片手を上げて挨拶すると、屋敷を後にしようと庭へ出た。


「やだ!早時!行かないで!」


言葉なく、縁側に立ちすくむ礼孝を押し退けて、何処からか炎が走って来て、俺の背中に抱き着いた。


炎の体重がのし掛かり、前のめりになるのを、俺は何とか踏みとどめる。


「離せ。」


俺は冷たく言葉を投げかけた。