「俺だって、この手の話は苦手なんだ。
女は水菊しか知らないからな。しかも俺の想いは、一方通行だ。
手ほどきなんて、とんでもないよ。」


早時は右手を左右に小刻みに振って、少々大袈裟に私の申し出を断った。


「そんな…早時…。
炎に振り向いてもらうには、私はどうしたらいいんでしょう?
容姿で早時に勝つなんてのは、到底無理ですしね。」


早時への皮肉交じりに、私は自分を卑下してみせた。


実際、早時の美しさには、誰も勝つ事など出来ないだろう。


しかも、私は炎より9つも年上の、おじさんだ。


相当の負い目があった。