「鬼と分かって部屋にあげてもらえる有難さが、お前に分かるか?
気が滅入るなど、とんでもない。
ずっとこうして、隠れて居たいくらいだ。」


早時の美しい顔に、疲れたような影が落ちた。


「私はずっと居てもらってもかまいませんよ。」


早時の言葉に対する、それは私の本心だった。


早時は、驚きと嬉しさが交り合ったような表情を見せたが、ふと我に返ったのだろう。


「すまない。
今のは冗談だ。」


と、悲しい声を出した。