あたしは玄関でまごついて、足が動かないでいる。


礼孝様はあたしの異変に気がついたのか、少し小首を傾げた。


「炎?」


「あっ。はい。
も…申し訳ありません。」


「あんまりにこの方が美しい顔立ちだから、ときめいてしまいましたか?」


当たらずしも遠からずな、割りと的を得た台詞を、礼孝様はからかうようにあたしに言った。


「いえ。あっ、はい。」


あたしはしどろもどろに返事を返して、客間に逃げ出した。