「あ、はよー唯斗」
「はよー」
明るい声と笑顔の一人の男子生徒。
篠原唯斗。クラスでも、一番の人気を誇る人。
明るくて、気さくで、親切で、好感を持たない人なんていないと思う。
男女問わず、みんなから信頼されてて、好かれてて。
私とは、住む世界が違うって感じがする。
私も、篠原くんみたいになれたら・・・
そんなうぬぼれたことを考えてみたり。
「あ、斉藤おはよー」
篠原くんが、私を見て言った。
こんな暗い私に毎日挨拶してくれるのは、篠原くんだけだった。
きっと、篠原くんは優しいから、ずっと一人の私を見て、かわいそうに思ってくれているんだと思う。
同情からの挨拶。
それでも、挨拶してくれることが本当にうれしいのに・・・
やっぱり私は上手く言葉が出ない。
毎日毎日、挨拶を返せないでいるのに、篠原くんはどこまで私に同情してくれてるんだろう。
本当に申し訳ない・・・
いつか、篠原くんに挨拶が返せますように。
そう祈ったのが、今日の朝のこと・・・

