「矢恵じゃん、8組なの?」


わたし達の後ろから聞こえた低い声。


「そうだよ~!
え、もしかして同じ?」

「そうそう、矢恵文系だろ?
俺も文系、アウェイ同士よろしくな」


矢恵が振り返って返事する間、わたしは8組の教室にいる知り合いに挨拶していた。

矢恵達の会話は何となく聞こえていたけど、相手が男って知ったくらいで、どんな人なのかなんて気にしなかった。

だって、わたしは…


「俺、蓮実 廉。
よろしく、蓮実ちゃん」

「………?!」


大の男嫌いなのだから。


「嫌われてんの、俺」

「あ~、明穂って男慣れしてないからさ。
それより、蓮実くんって…」


思わず背いたわたしの後ろでは、矢恵と“蓮実くん”の楽しそうな話し声が聞こえるだけだった。