ラブ☆ロマンス





「あ…の…」


「……何が?」



 私と彼の顔の距離、10センチメートル。




「……酷いって、何が?」

 怖くて縮こまってるせいか彼を見上げる形になり、更に怖さが増す。


 息がかかる距離で見下ろされてる私は、身動き一つ出来なくて。どう考えても彼から逃げる事なんて出来ない。



「なんで帰るの?」

「あ……よ、用事が、あって…」

「なんで逃げたの?」

「………」



「それは答えないわけ?」



 ……言えるわけ無いじゃん。



 私が無言で目をそらすと、させるかと手で顔を掴む。



「質問に答えて」



 数年前の高いアルトの声なんて忘れてしまうほどに、耳に甘く残る掠れた彼の声。