「やあだ、先生ぇ~。 さっきから呼んでるのは、ボクの事? それともア・タ・シ?」 みごとなシナをつくりながら 立ち上がったのは、サトウ君だった。 サトウ君は、ご丁寧に 「ア・タ・シ」の所で ちょんちょんちょん、と 指先で空気をつついて見せた。 ハルキ先生が、 ぽかんとして立ち尽くす。 教室内に、 かすかなざわめきが起こる。 だけどそれもやっぱり、 必死に爆笑をこらえるような おかしなしのび笑いだった。