は!?と振り返って、

ユリの視線の先にいる自転車の男を見ると、


確かにそいつは、
ありえないくらい綺麗な顔をしていた。

しかも真っ直ぐに、人の目を見る。


「ケンカ売ってどうすんだよ。収拾つかねえじゃん。

いやあ、ウチの生徒だなとは思ったけど、引き返して正解だったな。

まさか、あそこでつっかかってくとは。」



てか、さっき
オッサンを轢きかけたの、コイツじゃないか?


「・・・ありがとう、ゴザイました。」

なんとなく言いにくい「お礼のあいさつ」は、

ユリの可愛らしい
「ありがとうございました~!!」にかき消された。

そのことに、
なぜかちょっとだけホッとする。


「周りに気をつけて歩けよー。」と

とってつけたようなことを言って、

男はゆっくりと自転車を走らせる。


自分たちと同じ進行方向に去っていった自転車を、

ユリと並んで、ぼうぜんと見つめ続けた。



隣りのユリは目が完全にハートマークだ。



悔しいけど、負けたと思った。



頭の中じゃ、
さっきの射抜くように強い瞳が焼きついて離れない。




「・・・『ウチの生徒』?」


ユリが疑問系でつぶやくのも、聞き流していた。