「だけってことはないよ~。

タカオちゃんだって、
『あんなやつ顔だけだ』とかなんとか

結局、顔のよさは認めてたじゃん~。

それに、聞いたことあるけど

先生になるのってすっごーく、
難しいんでしょ?

競争率、すごいんだって。」


「それか、コネっていうじゃん。

あいつ卒業生だし。

コネだろ、どーせ。

あいつん家、
すっげー大金持ちって、

みんな知ってんじゃん」


その瞬間、先生が振り返って

二階のこの部屋を見やった。


聞こえたのかと、慌てて身を引く。


カーテンにぴったりと寄りそって
そっと下をうかがうと、

いつのまにかタバコをくわえた先生が、

軽く手を振った。


すぐ横を見ると、のんきにユリが

手を振り返している。



思わず、ため息がもれた。