飛ばされたモップは壁に激突して跳ね返り、
ガランガランと
音を響かせながら、
遠くの方で転がって止まった。
モップの落ちた先は渡り廊下に続いていて、
降りしきる大粒の雨と、
白くけぶったグラウンドのきれはしが見える。
「っぶねー、また割るかと思った・・・。」
先生がぽろっと言った『また』ってトコにつっこむのも忘れて、
私は、ぼうっと遠くのモップを見つめる。
でないと先生が、近い。
モップが飛んでいったのは全然反対方向なのに
とっさに私をかばってくれた先生は、
そんなの当たり前すぎてどうでもいいことみたいに、
モップに気を取られたまま、私から離れる。
そのまま、
その掃除道具を取りに歩きかけて、
「あ。」と
思い出したように振り返った。
素でいると、
綺麗過ぎてちょっと怖いくらいの先生の瞳に、
真っ直ぐ見つめられてたじろぐと、
すぐにその目はやさしく細められる。
「さっき『お前』とか言っちゃった。
ごめんね。」
へらっと笑って片手を上げると、
くるりと背を向けて歩き出す。
私はその後ろ姿をじっと見つめながら、
先生がゆっくりゆっくり歩いてくれればいいと、
飛んでったモップが私の目に見えてるより
ずっとずっと遠くにあればいいと、
そんなことを思っていた。
あっさりと先生がモップを拾い上げる。
私は先生がこっちを見る前に、
反対方向に落ちてる自分の鞄を取りに行った。

