***
「すーみれっ!一緒にお弁当食べようではないか!」
太陽はもうすでに昇っている昼のこの時間。
さっきチャイムの音がして、午前中の授業が終わったかと思えば、
前の席にいる瑞希はすばやく自分のお弁当を取り出し、笑顔で私の方を向いてきた。
「瑞希早いね。そんなにお腹空いたの」
「当たり前じゃないか!!もう昼だぞ!?」
グイッとお弁当を顔に押し付けてくるから、
視界がお弁当を包んである布でいっぱいだ。
柄は特にないけど黒い生地に周りには白いレースがついてる。
瑞希らしい。
でもこれじゃ邪魔だよ。
目の前が見えない。
はぁ、と溜息を吐き、お弁当をガシリと掴んで瑞希に押し返す。
それだけで視界がいっきに教室の風景と瑞希の顔に変わった。
「お昼だからお腹空くの当たり前だよね。でもごめん。今日は私お昼一人で食べたいんだ」
「え、うっそ!!菫いないと寂しいよー」
「ごめんね。明日一緒に食べよう?」
「……何かあったの?」
「違うよ」
「……親友なんだから、何かあったら言いなさいよー」
「何もないよ、大丈夫」
「……そっか」
俯きがちに私は言う。
それに返事を返した瑞希の声は、どことなく寂しそうだった。
俯きがちになった私の視界に映る、お弁当をギュッと掴んだ瑞希の手。
白いその手は、何かを堪えているようにも見える。
