夏の海~遠い日の約束~




それから海を眺めながら
一時間近く話した


彼女は別れようって
彼に伝えようとするけど
逢って顔を見ると言えなくて
家に帰ると後悔して

そんな自分が嫌で堪らないと



彼のことを嫌いになれたら

そう思う気持ちとは裏腹に
どんどん好きになってしまう

ますます自分が嫌いになる


『誰か私の心を彼から連れ出してくれたらな…なんてあかんね。ちゃんと自分でけじめをつけなくちゃ…。』


人って頭で分かってても
自分の心を自分でも
どうしようもないことがある


人を好きになる気持ち


『家で彼の帰りを待ってる奥さんのことを考えると重い罪を犯してしまったんだなって思うよ…。そういうの一番嫌いだったのに…。だから私は私が許せないんだ。』


隣に並んで座ってるから
彼女の顔は見えなかったけど
話す声が震えてるのが
分かった


無性に彼女を
抱きしめたくなった
その衝動を自分で抑えた


俺は何て言っていいのか
言葉が見つからず
暫く黙って聴いていた