古びた小屋の裏側で、黄金色の稲穂が気持ちよさそうに揺れている。
懐かしい景色に、マイアは息苦しさを感じた。楽しい思い出、甘酸っぱい出来事がいっぱいに詰まった景色なのに、棘を飲まされたような痛みが胸にある。
十代なかばほどの黒髪の男の子が、背中に大きな籠を背負い、厚手の手袋をはめて稲刈りをしている様子をマイアは遠目で眺めている。
少年は立ち上がり、思いっきり伸びをした。柔らかそうな黒髪が、静かに揺れる。しばらくの間、陽に照らされ輝く山稜を眺めている。
そのわずかな時間を眺めるのが、マイアは好きだった。
やがてしばしの休憩を終え、再び作業に戻ろうとする少年と目が合う。何度も、この光景を見た。
少年の口が、『マイアも少しは手伝いなよ』と語る。そのときの表情を、どうたとえればいいのだろう。充てられた仕事をさぼっている者を見つけ、窘める表情。けれど、優しさを感じずにはいられない目に、マイアの頬はそのたびに赤らんだ。
あんなに好きだったのに。
あんなに焦がれて欲しがっていたのに。
今は、紗がかかったように、ぼんやりとしかその顔を思い出せない。
マイアは、こらえきれず嗚咽を漏らしながら泣いた。



