花嫁に読むラブレター



 何も考えられないとはまさに今の状況だと、マイアはぼんやり思う。
 気がつけば、今まで自分の身の周りで起こった場面を無意識のうちに思い返していた。

 ユンが笑った。

 控えめに、目で笑うような笑い方ではない。珍しく、大きな声をあげて、目尻には涙まで浮かべながら、声を必死に抑えようとお腹を抱え込んで笑っている。

 まだ、マイアが嫁いで間もない頃だ、とすぐにわかった。

 水をいっぱいに溜めた大きなバケツを両手で支えながら、ふらふらした足取りで、ゆっくりマイアは歩いていた。家庭菜園で採れたじゃがいもを洗うための水を井戸からくみ上げたばかりである。

 もともとは、採れた野菜を保管するために使われていたバケツなだけあり、かなりの大きさがあった。今は揺れる水面に、歯を食いしばり目も当てられないほど歪んだマイアの顔を映しているバケツの中にも、たくさんのじゃがいもが保管されていた。いつもならば違うバケツに水を汲み、汚れたらまた汲みに行く作業を何度も繰り返していたのだが、ふと、大きなバケツならその手間もなくなるのではないか。そう考えたマイアはバケツの中身をひっくり返し、ありったけの水を汲んだ。