「大丈夫です。わたしはユンの傍にいることができるだけでも幸せです」
半分の本音と、半分の嘘だった。
正直に言ってしまえば、落胆しなかったわけではない。幼い頃から結婚は夢見ていたし、盛大な式を想像しては胸を躍らせたものだ。一生に一度、着られるかどうかもわからないドレスを楽しみにもしていた。当日まで、もう少し贅肉を減らせないかしら。そんなことまで実を言えば考えていた。
けれど、式がないからといって、ユンと結ばれないわけでもない。たとえ口約束のみの婚約としても、マイアは構わないとも思う。心寂しくは思うが、だからといってユンの価値が変わるわけではないのだ。もともとマイアには身分不相応だったと、諦められる事柄なのである。
「――素敵なお嬢さんを貰ったな、ユン」
クラウスが言うと、ユンはただ頷くだけだった。
だが横目で見た隣に並ぶユンの耳は、真っ赤だった。
マイアは、結婚式で皆に祝福されるのも憧れるが、こうして隣で思いを感じられるほうがよほど重要だった。



