口を噤んで、姿勢を正したまま使用人やフィーネの言葉に「ああ」だとか「うん」だとか頷くしかなかったクラウスは、とても厳かな方だとマイアは思った。ちらりと窺ったときに見た目が底光りしていた。とても厳しく、鞘のない剣に似た男性。――そう思ってひどく緊張した。けれど、クラウスは、微笑むとそれは本当に柔和だったのだ。ユンに似た目元が、さらにマイアを安堵させた。
「それはさておき、マイアさんはもう結婚式の話は聞いたかな?」
「いえ」
首を振りながら答えると、クラウスの視線がユンとフィーネに向かう。眉根を寄せたクラウスが、わずかに窘めるような色を含ませたのがマイアにはわかった。
「なんだ。何も言わずにマイアさんをさらってきたのか。式のことはあれほど伝えるように言っておいただろう」
「――あの」
クラウスが言葉を続けようとしたのを、マイアが遮った。なんとなく、重い空気にいたたまれなくなったのだ。おそらく、このまま最後までクラウスの話を聞いていたら、ユンもフィーネもクラウスに頭を下げるのだろう。そう思えてしまう雰囲気だったのだ。誰かが謝る姿を見るほど悶々とすることはない。



