花嫁に読むラブレター


 食事の席につく前に、フィーネから使用人のひとり、カーヤだと紹介された。

 そしてもう一人。

 長い、黒髪の少女は、カーヤと同じ使用人で、レナータ、という。


 ステイルを思い起こさせる、冷ややかな瞳。しかし、目が合うと軽く会釈をし、花が咲いたようにやわらかく笑んだ。

 この辺りで黒髪だというだけで珍しい。マイア自身でいえば、ステイルしか見たことがない。それだけでも目を奪われるというのに、彼女もまたステイルと同じように艶やかな直毛だった。

 てきぱきと無駄のない動きを見てもわかるが、引き締まった表情からも、彼女がとても有能な使用人なのだとわかる。

 マイアのそばを通り過ぎるたび、蜜のような甘い香りがした。

 思い出さないよう、懸命に努力を重ねていたのに、いとも簡単にステイルを思い出した。

 胸に、炎で少しずつ燻って焦がしたような痛みを覚えた。