マイアが差し出した小指に、ユンの指が絡まる。
そうして、マイアは満足そうに頷く。
本音を言えば、寂しくないわけがない。
慣れない場所で、周りは知らない人ばかり。きっと、日々何気なく過ごしてきていたもの全てに戸惑うのだろう。お腹が空いたといって、勝手に食べ物を探すわけにもいかない。汗をかいたからといって、いつどんな時間にでもお風呂に入れるわけでもなければ、訊くのもなんだか憚られる。気安く、自分の家のように、なんて言ってくれていても、やはり他人の家なのだという認識は消えない。自然と部屋の中で過ごす時間も増えるのだろう。
そんなとき、ユンがいるのといないのとでは全然違う。
ユンに何かを期待するわけでも、望みがあるわけでもない。
ただ、親しんだ者が傍にいるというだけで、心に落ち着きが生まれるのだ。
しかし、マイアは口を閉ざして笑顔を作った。
マリーおばさんやブラウンおじさん、施設で一緒に過ごしたみんな、それにステイル。誰にでも我儘を言って育ってきたマイアだったが、なぜか言えなかった。
大切な仕事だから、といった分かりのよい理由ではない。
心の中に、霧が立ちこめているようだ。もやもやとした気分が晴れないまま、それでもマイアは笑顔を終始崩すことはなかった。



