「ごめんね、マイアさん。ぼく、まだ言っていないことがあるんだ」
「……なに?」
「ぼくの父は、王城で専属医として働いているんだけど、ぼくも週の半分は父と同行してお城に行かなくちゃいけないんだ。だから、その間どうしてもマイアさんと一緒にいることができなくて……」
「お医者さまなの? ユンも?」
お城の中で、国王さまや王族の方々を診てまわるユンが脳裏に浮かび、マイアは目を丸くした。
ユンは苦笑を浮かべて頷く。
「ごめん。本当にごめん……でも、寂しい思いをするとわかっていても伝えられなかったんだ。それが嫌で結婚をしたくないって言われそうで……」
「見くびらないで欲しいわ。全然会えないわけじゃないんでしょう? それなら我慢してあげるもの」
マイアは胸を張って答えた。
晴れやかな表情と、些末なことだといわんばかりの口調にユンは安堵し破顔した。
「そのかわり約束よ。帰ってきたときはとことん私に付き合ってもらうんだから」



