ルチア―願いを叶える者



振り向けば、肩で息をするアルがいた。


「アル……?」

「アル…?じゃ、ありません!!!!」



アルはズカズカて私足早に私に近づいて来る。


ヒ、ヒエエエエッ!!!
鬼が来たーーッ!!!


声にならない悲鳴を上げ、後ずさる。


「逃がしませんよ」


―ガシッ


右手首を捕まれ上に持ち上げ、顎を反対の手で捕まれる。


「目を離した隙に、また何をしようとしてるんです?」


「あ………」


アルの瞳、怖い……
すごく怒ってる……?


「力は使わせない、そう言ったはずです」

「でも…」

「言い訳は聞きません」


アル…力を使わせないって約束……


覚えてたんだ……


「アル…」

「なんです?」

「ありがとう…」

「!!!」


微笑んでみせると、アルは私から顔を逸らした。


「私、アルが心配してくれたのが嬉しい。でもね、願う事はやめられない。ナルの為にも…」

「そんな事を言ったら、きりがないんですよ!!あなたの力を必要としている人間は腐るほどいるんです!!」

「でも…」

「いちいち願いを叶えていたら、あなたはどうなる!!?」

「!!!!」


ナルが…敬語じゃない…


「利用されるだけ利用されて、傷つくのは花音、あなただ!!!」



あぁ…私の為に……
アルは怒ってくれるの…?


自然と心が温まる……



「アル………」

「っ!!!!」


自分からアルに抱き着く。ごめんねアル…


「少しだけ…甘えさせて…」


甘えてと言ってくれたアルだから、私は甘えられるんだ…


「…少しとは言わず、いつまででも甘えたらいい…」


アルの小さく呟いた声が聞こえた。