ルチア―願いを叶える者



「ナル、そろそろ部屋に戻って。風が出てきたから」


「それは私の台詞だよ、姫を部屋まで送ろう」

「…大丈夫、もう少し花を見たら、すぐに帰るから…」


そう言えば、ナルは何かを感じたのか、最後に私に微笑んで帰っていった。



―サァァ…


アスランが風に揺れて歌を奏でる。


「…あぁ…不思議…」


不思議と、怖くない。
この力は、私の命を奪っていくのに……


「ねぇ…ルカ……」


―ヒュオォ…


呼び掛ければ、応えるように風が吹く。


「私、ナルに居場所を取り戻してあげたい。あの人が守る、この場所を孤独という悲しい場所にしたくない」


―ヒュオォ…


『…君は望むの……?』


"君は望むの?"そう聞こえた気がした。


「うん…。また約束破るね…ごめん……」


でも……
目の前で苦しんでる友達を見捨てるほど非道にはなれなくて……


たとえ、代償が大きくても、払う価値がある願いだもん…


「…お願い…ルチアの力よ……」

「待って下さい!!!!!」

「えっ…………?」



まさに願おうとしたその時、誰かがそれを止めた。