『おぉ…やっと…。我が子を守れる…』
神様は泣いているように見えた。
『もう、ベレスレリアは滅ぶしかないと諦めていた。だが…お前だけが希望だったのだ』
「私が…希望……?」
『お前は、花鳴の娘。そして、お前は花鳴と同じ、我が子を愛してくれた』
…お母さん……
『判決を下す。ベレスレリアの存続を許可する!』
一際大きな光の神様が判決を下した瞬間、光達が歓声を上げた。
『良かったな…』
『…これでベレスレリアは存続する』
光達が祝辞をかける。
目の前の光は嬉しそうに光輝いた。
『済まなかった…ルチア』
光が輝き、私の前で人型を象る。
『お前の命を…我は犠牲にしてしまった…』
「神様…。それでも、私は守りたかった。ベレスレリアが大好きだから…」
だからその為の犠牲なら、私は後悔してない。
『花音…そこで我からの提案がある』
「提案…ですか?」
何だろう…
私の役目は終わったんじゃないの…?
『数多のルチアの想いを継ぎ、託された者、花音よ。その美しき魂と契約をしたい』
「…契約?」
『我がベレスレリアの神子となれ、花音。千里を見据え、ベレスレリアを正しき世界へと導け』
…ベレスレリアの神子?
ベレスレリアを導く…?
『全てを見通す力をお前に授けよう。それを我が世界を導く為に使って欲しいのだ』
「ですが、私はもう…」
死んでいる。
命も尽き、肉体すら失ってしまった。
今あるのは魂と、その記憶が生み出した幻の体。
私はもう…
『神子となるなら、生を与えよう。今度こそ幸せになれ、花音』
「え…じゃあ……」
私はまたベレスレリアに行けるの!?
『頼めるか?』
「あ…はい!!私、頑張ります!!ありがとうございます神様!!」
『ありがとう…か…。本当に、おかしな親子よ』
神様が笑った気がした。
『では行け。お前を待つ者の元へ。そうだな、神子の印として我が翼をやろう』
神様の一言で、私の体が光を纏う。
―バサッ
私の背中に、純白の翼が生えた。
「これ…は……」
『神子、お前を愛しい我が子のように愛そう。我が名はアスラ。ベレスレリアを創造せし神。我が恩恵は、お前の為にも分け与えよう』
「アスラ…様…」
私はアスラ様にひざまずく。そして頭を下げた。
「私の生涯を、ベレスレリアの為に捧げます。あなたと、魂の契約を…」
『成立した。行け、花音。ベレスレリアへ』
―パァアアアアッ
光が瞬き、私は頷く。
今度は、ベレスレリアで生き、ベレスレリアを導く為に…
―バサッ
私は飛び立った。