「花音!!!」

「…ア…ル…………」


私は地面に横たわりながらアルを見上げた。


そんな私を、アルが抱きしめる。


「全部終わったんですよ、花音…」


その言葉に、私は首を横に振った。


まだ終わってない。
最後にやらなければならない事がある。


悪魔は、この地に悲しみを、憎しみを生み出しすぎた。


そのせいで帝国ガルディアは争いを招いてしまった。


「ここは…お父さん…の…守ろうと…した…国…」


お父さんが守ってきた国だから…


「そして…お母さんが…愛した…世界…」


お母さんが命をかけて守った世界…


「ルチアや…皆の…大切な…世界…だから…」


私は最後に、この争いを終わらせる。


皆が手をとりあい、笑顔で暮らせるように…


「花音…何を……」

「アル…最後まで…ありがとう…」


私は笑う。
そんな私を、アルは涙を流しながら見つめる。


「まるでお別れみたいに言わないで下さいっ…」


アルは私を強く抱きしめる。私は、抱きしめ返したいのに腕に力が入らない。


最後くらい…
あなたに触れたいのに…


もう体が動かない…


「ありがとう…アル…。ありがとう…皆…」


私は皆に笑顔を浮かべた。悲しいけど、今は笑おう。

この人達には、私の笑顔を覚えていて欲しい。


私の死が、皆の重荷にならないように…



「花音…行くな…」

「シェス…私、シェスの事お兄ちゃんみたいに…思って…たよ…」


いつも優しくて、私を包み込んでくれた人…


優しく頭を撫でてくれた人…


「お前はもう俺の家族だ。俺も、お前を妹のように可愛がっていた」

「ありがとう…」


こんなお兄ちゃんがいたら、皆に自慢できるね。
レイズ王子がうらやましい…


「馬鹿野郎…せっかく助けた命だってのに…」


今度はロイに笑みを向ける。


「あの時は助けてくれてありがとう。ロイが助けてくれたから、私は今、願いを叶えられるの…」



この世界を守る事が出来る。これはロイが私の命を繋いでくれたから。


「ロイ…ありがとう…。ロイは…不器用だけど…優しい所が…大好きだよ…」

「不器用は余計だ、馬鹿」


こんなやり取りだけで、私は幸せな気持ちになる。


「アル…。私…ずっと愛してる。私に、人を…愛する気持ちを…教えてくれて…ありが…とう…」


あなたがいなければ、私は誰も愛することはなかった。


こんな気持ち…
初めて知った……


「俺も…生涯あなただけを愛していますっ…だから死なないで下さい!!」


アルの涙に、私もまた涙を流す。