「ナスタ山脈の水が枯渇しているのは知っているな?」
「うん、シェスが話してくれたよね」
誰かが意図的に何らかの方法で水を枯渇させた可能性があるって言ってた。
「残りの数少ない水源に、毒が混ざっていた」
「!!!!!!」
毒!!!?
「民が何人か口にしてしまっている。その何人もが死んだ」
「死んだ…そんな……」
どうしてこんな事に…
「昨日の調査では水源に以上はなかった。ナスタ山脈の水源には見張りがいたってのに……くそっ…」
「シェス…」
シェス、一番悔しいのはシェスだよね。
誰よりも民を思って、頑張ってたのに…
「俺はまた守れなかった…」
シェス………
私はどうしたらシェスの願いを叶えられる…?
―力を使えば…
シェスの願いを叶えられる。でも………
この力を使ったら……
「花音、着いたぞ」
考え事をしていたせいか、あっという間にナスタ山脈の水源へと着いていた。
「王子、こちらです」
アルが私達に駆け寄る。
「アル、原因はわかったか?」
「いえ…。毒の特定も、発生源も解っていません…」
「そうか………」
重たい沈黙。
それだけ水が人の生活の上で重要だっていう事。
だから二人も、この国の人達も必死だった。
私が力を使っていたら、死なずにすんだ人がいたかもしれないのに…
「シェス王子!!!」
沈黙を破ったのは調査隊の一人だった。
「ルアーネの民達が山脈のふもとまで抗議に来ています!!」
「そうか……」
抗議?
抗議って………
「王子、俺が代理で謝罪をします。あなたはここに…」
「いや、俺が行く。民には俺から謝罪したい」
謝罪って………
「どうして!!シェスはこの国を守ろうって必死だった!!なのに謝罪なんて…」
なんでシェスが謝るの?
シェスだって頑張ってた!!誰よりも辛かったのはシェスだ。
「俺は王子だ。だから、民を守る責任がある。守れなかったのは、俺が不甲斐ないからだ」
「そんな………」
これからシェスは、守ろうとした民に責められるの?
優しいこの人を、ただ任せていた民に責める権利なんかない。


