ルチア―願いを叶える者



部屋の外へ出ると、お手伝いさん達が廊下を慌ただしく走っている。


「あ、あの!!」

「はい!?あ、花音様!?」


ちょうど前を走っていたお手伝いさんに声をかける。


私の存在、ルチアである事は伏せられてる。


なんでもルチアはとても貴重な存在だから、狙われたら危ないとシェスが配慮してくれたのだ。


国王様やシェス、アルなどごく一部しか知らない。


私は居候という事になっている。


「何かあったんですか?」

「あ…それが……」

「俺が直接話そう」


私の後ろからヌッとシェスが現れる。


「王子!!はい、失礼いたします」

「あぁ、ご苦労だったな」


お手伝いさんはシェスに労いの言葉をもらうと、頬を赤く染めて走り去った。


あぁ……
シェスは格好いいもんね。


私だってイチコロだよ…


「花音?ぼけっとしてどうした?」

「え?あ、大丈夫!それで何かあったの?」

「あぁ…。話しながら行こう」

「行くってどこへ?」

「……ナスタ山脈だ」


…ナスタ山脈……
あ、この国の水の源。


もしかして何か……
嫌な予感がする………


「俺の馬に乗れ。アルは先に行っている」

「わかった!!行こう」



私達はナスタ山脈に向かう事になった。