「寝れないのですか?」
「あ…アル!!」
アルは自分の唇に人差し指を当て、思わず声を上げた私を咎める。
皆寝てるんだった…
つい嬉しくて…
「花音は、夜空が好きなんですか?あなたはいつも夜空を見上げていますよね」
そう…かな……?
でもそうかも。
改めて考えてみると、私は夜空が好きなのかもしれない。
でも夜空っていうより…
「私はこの世界の星空が好き…かな」
曇りのない空に、一つ一つが存在を主張するように精一杯光っているように見える星達。
それが私にはこの世で最も美しく見えた。
「俺はクリアナの森にある泉が好きですね」
「泉?」
クリアナの森、私が召喚された森だ。
あの森には泉もあるんだ…
「えぇ、森を奥深くまで進んで行くと、森が切り開けた場所があるんです。そこに泉があります」
アルが目を輝かせて語る。よっぽど美しい泉なんだろう。
見てみたいなぁ…
「幻想的で、どこか神秘的なんです。戦いが終わったら連れて行って差し上げます」
「終わったら…?」
「えぇ。あなたはまだまだこの世界の美しいモノを知らない。星空なんてそのうちの一つに過ぎないんですよ」
私も……
もっとベレスレリアの綺麗なものを見てみたい。
たくさんの人に触れ合いたい。
私に時間があるのなら…
もっと沢山知りたかった。
「見に行こう…泉」
「えぇ、約束です」
私はぎこちなく笑顔を作った。
本当のお別れまで、あなたが悲しい顔をしないように…
私は嘘をつく。
あなたにする最後の嘘を…


