「俺は…兄上に酷い事ばかりを…」

「酷い事?お前がいつ俺に酷い事をした?」


シェスはポカンとしながら首を傾げている。


「いつって…ほぼ毎日嫌みしか言ってなかったけど…」

「そうだったのか?まぁ、気にすんな。弟の嫌みくらい何度でも聞いてやる」


シェスはそう言ってニカッと笑った。


「兄上……っ…」


すると、レイズ王子が困ったように私を見た。


"良かったね…レイズ王子"


私は口パクでそう伝えて笑顔を向ける。


すると、レイズ王子は困ったように笑い、それでも嬉しそうに頷いた。


「頼んだぞ、レイズ」

「っ!!!はい!!」


国王様にも言葉をもらい、レイズ王子は本当に嬉しそうに笑った。


「居場所…見つかって良かったね、レイズ王子…」


私と同じ孤独の檻に捕われた人。


やっと…檻を壊せたんだね…


まるで、もう一人の私を見ているようだった。


だからかな、自分の事のように嬉しい。


「頑張って…」


小さな声で笑顔のレイズ王子に声をかける。


頑張って…
私も頑張るから…


どうか、この人がまた闇に捕われませんように…



幸せそうに笑うレイズ王子を見つめながら、そう願った。