ルチア―願いを叶える者



「私達はもう一人じゃないよ…」

『…っ……』


お父さんは目を見開く。


「私にはお父さんがいる。お父さんには、私がいるよ…」

『…あぁ…。我は…一人ではなかったのだな…』


お父さんは私に手を伸ばし、私の頬を撫でる。


『あぁ…花鳴にそっくりだ。だが、瞳は我に似ている』

「…うんっ…」


涙がポロポロと流れていく…


何十年、この瞬間を待った事か…


お父さんは途方もない時間を待ったんだろう。


私よりも遥かに長い時間を…


「ねぇ、お父さん。私、今一つだけ叶えたい願いが出来たの。自分の為に、力を使っても良いかな?」

『だが…お前の命が…』

「それでも…叶えたい…」



今でなきゃ、もう叶えられない気がするの。


その為に、命を削ってもいい…


だから…


『もう決めたのだろう?なら我が何を言おうと無駄だ。お前は我と花鳴の娘。お前の両親は頑固だからな』


そんなお父さんの言い草に少し笑ってしまう。



「ごめんね…アル…」


生きると約束したばかりなのに力を使う私を許して。


どうしても叶えたいの…


「…あなたが叶えたい願いの為なら、迷う事ありません。生きる時が短ろうと、俺があなたを愛している事に変わりはありません」


…アル……
ありがとう……


「お父さん、願って。お母さんともう一度会う事を」


私の力は私以外の誰かが願わなければ叶わないから…


『…我はずっと願っていた。今も、この先も…』


お父さん……
そうだね、私達の大切な人だもんね…





私は祈るように手を合わせ、瞳を閉じる。



「ルチアの力よ……」


―パァアアア!!


私から光が放たれる。


もう一度…
今度は別れ際のあの悲しい瞬間ではなくて…


あなたにもこの幸せを…


「お母さんの魂をここに!!」



―ピカッ!!!



私から命の花びらが散っていく…


―ドクンッ


「うっ…く……」


今は倒れられない…
自分の願いを叶えるために…