ルチア―願いを叶える者



『話せばあなたは止めたでしょう。私は立ち止まるわけにはいかなかったのです…』


この人はもう…


助からない。
そんな確信があった。


だってこの人は……
私と…同じ……


同じ…?


何が同じなの?



―ズキンッ


胸が痛い…
何かを忘れてしまっている。私は大切な何かを…



『お前が犠牲になる事なかった。こんな世界の為に…』


レムは怒りと悲しみが合わさったような複雑な表情をしていた。


『こんな世界ではありません。あなたが生きる世界ではありませんか』


女は微笑む。
世界を愛おしむように優しく。


『我はお前がいない世界などで生きたくはない!!』

『…あなたは一人ではありません』

『お前は我の全てだ』


頑ななレムに女は寂しげに笑う。


『このまま…あなたと生きていけたら、どんなに嬉しかった言葉でしょう…』



でもそれは出来ないと遠回しに伝える。


『でも…私はあなたを置いていかなくてはなりません。だから…ここで生きていくと約束して下さい』


なんて悲しい約束なんだろう…


お互いに一番辛い約束だった。


『お前のいない世界で一人で生きていけと?お前との思い出が生きるこの世界で死ぬまで孤独に!!』


それは歎きだった。
どんなに願っても叶わない願い。


『レム様…私はあなたの生きる世界が大好きです。その為に私が死ぬ事になったとしても、それだけの価値があったのです』


女は心底幸せそうに笑う。それが偽りではない事は一目瞭然だった。



『…だが…』

『私の想いまで否定しないで下さい。私はあなたと、あなたの生きる世界を愛しています』


―たとえこの身が果てようとも…


「え…?」


今、頭の中に聞こえた声はなんだったんだろう…