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…寒い…
ここはどこなんだろう…
私はなんで…
ゆっくりと起き上がり、周りを見渡す。
そこはただの闇だった。
「…私は…」
私って誰?
ここにいるのは何故?
何も分からない…
何も無い…
私は…空っぽ…
『…どうして……』
声が聞こえた。
それは何故か痛々しく聞こえた。
『どうして…お前は…』
目の前に淡い光が現れた。なんとなくそれに触れてみる。
―スッ
それは私の指に触れた瞬間、一面に広がり私を包み込んだ。
「…………ここは…?」
光が晴れると、目の前には泉が広がっている。
そこには、見知らぬ男女がいた。
女性を抱き抱え、涙を流す男と、血の気の失せた顔で微笑む女…
それは美しくも悲しい場面だった。
「あの人………」
女の人は、私と同じ淡い桃色の髪をしている。
『どうして…お前が死なねばならない…』
男のさらさらとした長い黒髪が風になびく。
その顔は、悲しみに溢れていた。
『泣かないで下さい…レム様…』
女は男の頬を撫でる。
…男は涙を流していた。
『どうして…代償の事を黙っていたのだ。どうして…』
代償……
その言葉が妙に胸にひっかかる。
―ドクンッ
私は…
何か大切な事を忘れてしまった…
そんな気がしてならない。


