「あとどれくらいであなたは…」
何度も力を使ってるはずだ。死ぬだなんて恐かっただろうに…
「…馬鹿ですよ…あなたはっ…」
馬鹿なのは俺か…
見ていると約束したのに…
俺は何も見えてなかった。
「花音…すみません…気づいてあげられなくて…」
なのに俺は……
傍にいるのが当たり前に…
「だがそのルチアは力を使う事をやめられない」
「…どういう…事ですか…?」
これ以上続けたら花音は……
「ルチアに直接聞くといい」
「ですが、花音は心を…」
「ここは虚ろなる世界。我はこの世界の王だ」
自らを虚ろの王と言う声が何も無いただ闇だけがある世界に響き渡る。
「我と同じ…儚き者を愛した男よ…。ルチアの心に触れ、その闇から救い出せ」
…花音の心に…
あなたがずっと一人で抱えてきたものを共に背負いたい…
「花音…必ず…。必ずあなたを取り戻しますから…」
どうか一人だと嘆かないで…
あなたが救いのルチアなら、俺はあなただけの救いになろう…
「…扉よ……」
―スゥッ
闇の中から、一つの扉が姿を現した。
「ルチアの心の扉だ。お前自身が闇に捕われるかもしれない。それでも進む覚悟があるのなら…我は止めぬ」
…迷う事なんてない…
俺はドアノブに手をかける。
「俺は…花音を取り戻す」
その想いがある限り、見失わない。
―キィィ…
もう一人にしない。
あなたは…俺が必ず…
揺るがない想いを胸に、その扉の向こうへと足を踏み出した。


