ルチア―願いを叶える者



『…お前は光のルチアを殺したいのか?』

「…なにを……?」


何を言ってるんですか、この人は…


意味が分からない。



『お前は知らないのだな。ルチアという奇跡の存在が、どんな思惑の上に存在するかを…』

「…どういう…事です…?」


こんな奴の言うことを聞く必要はない…


そう思う反面、嘘は言ってないのではないかと思う。


…なぜでしょう…


この声の主は、姿こそ見せないが、とても清んだ声をしていた。



『ルチアは奇跡などではない。世界の人柱であり、神の傀儡』


…どこかで聞きましたね。
あぁ…
ルリが言った言葉と同じ…



人柱、それは生贄、傀儡、それは操り人形を表す。


ルチアはこの世界の生贄、神の操り人形だと言いたいのですか?



「神など、人の信仰心が生んだ空想上の存在でしょう?」


存在するはずない。


『残念だが…神も、悪魔さえも現に存在する』

「そんな馬鹿な…」

『ルチアは神が与えた宿命の元に存在する犠牲者だ』


ルチアは…神から生まれたと?


頭では理解できる。
でも…理屈では理解出来ない。


『知りたいか…真実を…』

「…ええ、もちろん」

『知れば、後悔するぞ』


それでも……
それを知れたなら、花音に本当の意味で寄り添える気がした。


「それでも…知りたい…」

『なら見せてやろう。ルチアの真実を』

「…あなたはなぜ…」

『…お前と同じだ…。我は…』




そこで声は途切れた。
変わりに世界が一辺する。


そこは………



ただ真っ白などこかの宮殿の広間のようだった。