ルチア―願いを叶える者



「だから何?私は私の願いを叶える為に世界も人間も消す。あなたに選択の余地なんてないのよ」


ルリは黒装束の人間に目配せをする。


まさか……


今度は数人の黒装束の人間達がアルを囲む。


「アル!!!」

「花音?あなたも失えば分かるわ。この世界の醜さが、人間がどれだけ愚かな存在か」


ルリの言葉なんて耳に入ってはこなかった。


ただ…
その剣を振り落ろさないでと…


何度も願う…


「させないっ…ルチアの力よ!!!」

「…闇に染まりし我がルチアの力よ」


…え……?
私の声を遮るようにルリが口を開く。


「白きルチアの心を閉ざせ!!!」


ルリから黒い闇の花びらが散り、私を闇が包む。



―ズキンッ


胸が痛い。
一体何が………


「うっ…ぐ……あ…」


―何も考えるな

―闇の中にただ眠れ



声が聞こえる。
その声を合図に私は何も考えられなくなる。


視界は鮮明だった。


…私……
駄目…私はまだ…


―心など…


私はまだやらなければならない事が…


目の前にいるアルを見つめる。


「花音っ…しっかりして…くださっ…」


血に染まる誰かを私はただ見つめる。


この人は……
誰だったか……


思い出せない…


―心などあるから悲しむ



まだ………
まだ…?まだなんだというんだろう。


私は何を…


―さぁ眠れ


それを最後に私の視界は黒く塗り潰されていく。


「駄目っ…です…捕われ…てはっ…」


腕に温もりがあった。
でも…


それすら分からなくなっていく…



最後に見えたのは、涙を流す綺麗な男性だった。