ルチア―願いを叶える者



「私はルチアを連れて行くわ。あなた達はあの人間を足止めしときなさい」


「え…?」


気付いた時には遅かった。


―グワンッ


空間が歪み、私の体を闇が引きずりこもうとする。


「い、嫌っ!!!」


必死に手を伸ばす。


「花音!!!!」


アルが私の異変に気づき、すぐさま私の手を掴む。


「アルっ!!」

「離してはっ…いけません!!」


物凄い力でアルは私を引っ張る。


腕が取れてしまいそうな程に強い力…


痛みよりも安堵があった。


アルは…私を助けてくれる…



「無駄よ」


ルリがそう口にした途端、アルの背後に人影が見えた。


「え……?」


アルは気づいていない。
私に必死になっていたせいで背後の気配に気づいてないのだ。



「アル!!!後ろっ!!!」


半ば悲鳴のように叫んだ。

―グサッ


「…ぐはっ……」


それでもアルは私の手を離す事はなかった。


「な…んで…………?」


アルの体を貫通した剣先が、私の目の前にある。


血が剣から滴っていた。



私の手を離して避ける事だって出来た。


アルの腕前なら敵を返り討ちにする事だって出来たはずなのに…


私の手を離しさえすれば!!


「嫌…アルっ……?」

「…ぐっ………」


アルは苦しそうに呻く。
それでも私の手を離さない。