「シェス、どうかした?」

「いや…。ふとルチアの伝承を思い出してな」

「ルチアの…伝承……?」


この世界では、ルチアってそんなに有名なの?


「ルチアのお前は何も知らないみたいだからな、明日にでもルチアの伝承の書物を部屋に届けてやる」

「シェス…」

「何も知らないのは嫌なんだろう?」


コクリと頷くと、シェスは私の頭をわしゃわしゃと撫でた。


なんか、お兄ちゃんみたい。お兄ちゃんがいたらこんななのかな…


「話は戻るが、何者かがこの国を陥れようとしているのは確かだ。それを止めるのが王子の務めだ」

「それに、異変があるのはこの国だけではありませんからね」

「どういう事?」

「言葉の通りだ、永遠に夜が続く国、大量の魔物に襲われた国など様々ですね」

夜が続く…太陽が昇らないという事?


「魔物って……?」

「名の通り、人を喰らう魔の獣ですよ。あなたの世界にはいなかったのですか?」


「そんなのいないよ!!私の世界は、戦争がある国もあるけど、ずっと平和な場所。私の国には武器なんて持つ人いなかった…」


それくらい平和だったんだ…あそこは…


「武器を持たない…信じられないな」

「えぇ、いきなり斬りかかられたらどうするんです?」

「花音の世界は天上のような世界だな」


天上の世界か……
今ではそう思える。


私、あの世界に帰れるのかな……