「普通なら…そうですね…」
でも私は、名前に込められた意味を知らない…
「お前は違うのか、花音」
「私は、私に名をくれた人を知らない。話した事もないから…」
きっと私はいらなかったんだと思う。
本当の両親にも、今の両親にも…
「必要とされてなかったんだ…」
「花音…お前……」
心配そんな顔をするシェスに、私は無理矢理笑顔を向ける。
「大丈夫、辛いなんて思ってないよ!!私はもう大丈夫!」
そんな時期通り越した。
今なら辛い時こそ笑顔になれる。
これが私の精一杯の強さなの。
「そんな顔して良く言う。お前は頑固だな」
「っ!!!!」
優しい笑みを浮かべるシェスに、ルカの面影が重なった。
ルカ…………?
「どうした、花音?」
「あ……」
気のせいだったみたいだ。ルカ…………
「ごめん、知ってる人に似てたから…」
「ルカ…ですか?」
「っ!!!!?」
突然聞こえた悪魔の声に背筋が凍る。
「予想よりも早い到着だな、アル」
「全く、あなた方には呆れますよ」
ついに見つかったというのにシェスは普通だ。
「こいつはすぐに俺を見つけられるからな」
「当然です」
仲良いんだ…
やっぱり主従関係とか、そういんじゃない。
信頼だ。
「ところでルチア、ルカとは誰です?」
「あ………」
またその話に戻るんだ。
「俺に似てるっていう奴の名前か?」
シェスに……
うーん…似てるように見えただけで、シェスはルカじゃない。
「似てるけど違う…かな。ルカは私の大切な人なの。この世界で誰よりも…」
初めて私を見てくれた。
繕う私じゃなくて、本当の私を……
「それから、ルカはルチアだよ」
「どういう事です?ルチアは何人も存在するのですか?」
「それはないな。伝承ではルチアは世界にたった一人だけと記されてる」
世界にたった一人?
「じゃあ、ルカはこの世界にいないって事?」
私を守ってくれているのはルカで、この世界のどこかで私を待ってるんだと思ってた。
なのに……でも…
「ルカが私にルチアになれって…。ルカが私をここへ呼んだんじゃないの…?」
「落ち着きなさい、ルチア。まだ決まったわけじゃないでしょう」
不安と戸惑いで混乱する私を、アルが宥める。


