「俺は…無力だった自分が嫌で、ルカさんに嫉妬すらしていました。でも…」


アルはそう言って剣を握りしめる。


「これで…あなたを守る事が出来る…」


剣をとり、構える。
剣はアルを主と認めたのか、光をさらに瞬かせる。


「炎よ!!」


アルの剣から炎が生まれ、熱風が吹き荒れる。


「ア…ル……?」


胸が苦しい。
刻印がズキズキと痛む。


それでも、名前を呼ばずにはいれなかった。


あの時……
あんな別れかたをしたのに…


「なんで…私を…守って…くれ…る……の…?」


酷い事言って、アルの手を振り払ったのに…


それでも、アルは私を守ってくれるの…?


「さぁ、正直俺にもよくわかりません」


アルは困ったように笑う。

「だれかに執着するなんて…俺自身、驚いてるんですよ」


アルは剣先をルリへと向ける。


「…俺は、花音。あなたが俺以外の誰かに泣かされる所は見たくないみたいだ」

それって…どういう…


なんでかな…
すごく嬉しい。


満たされていくみたい。
アルと離れていた距離が近づいていくような…



「ルカ…余計な事をしてくれたわね…。人間ごときに有り余る力を与えたらどうなるか、知らないわけないでしょうに…」


…ルリ……?


ルリの顔が何故か悲しそうに見える。


もしかして……
ルカが消えた事をルリは悲しんでるの?


まだ、心が残っているのだとしたら…


「ルリ…もうこんな事…やめて…」

「うるさいわね、死に損ないが」


―ヒュンッ


闇の矛が私に向かって襲い掛かる。


避けられない…
体が動かない……


「大丈夫だ…花音…」


シェスが私の前に立つ。


「シェ…ス……?」

「俺にとってお前はもう家族みたいなものだ。俺だって、大事なものを傷つけられるのは…我慢ならない」


―ヒュウゥゥゥッ


空気が冷たくなっていく。
シェスの剣が水気を纏った。


「はぁっ!!!」


―ヒュンッ


ルリの攻撃をシェスの斬撃によって生まれた氷の盾が弾く。