「もうすぐ夕飯だよ、ロイを呼んで来ておくれ」
台所からおばさんが顔を出してそう言った。
「わかったよ、メリラおばさん」
そのままシオンは家を出て行った。
「あんた、旅人だってね」
「あ、はい」
メリラおばさん。
私が家に入ってすぐ歓迎してくれた人。
食料だって困ってるはずなのに…
「大変だったろう、女の子が旅なんて」
「いえ…」
メリラおばさんは私の傍に来て私の手を握る。
あ…温かい……
しわしわだけど、なんて優しい手なんだろう…
「きっと事情があるんだね。私でよければ、いつでも相談に乗るからねぇ」
「…ありがとうございます…」
出会ったばかりなのに…
私は、出会う人に恵まれているのかもしれない。
少しだけ…
私の不安を話してもいいのかな…?
「…旅は、私が言い出した事なんです」
「そうかい…」
私の使命なような気がした。やり通さなければならない役目。
私にしか出来ない事…
「この旅は、きっとたくさんの人を救う事が出来る。だからこそ、私達は旅をしてきたんです…」
でも……
たくさん戸惑いがあった。
私の知らない何かが少しずつ明らかになっていく。
それが恐かった…
「でも私は剣も握れない、自分の身も守れない。いつも守られて…。そのうち、自分の身一つ守れない私が、自分以外の誰かを守るなんて事…出来るのかなって…」
不安だった。
私には重すぎる…
世界なんて、広くて大きすぎるんだ…
「仲間とはぐれてしまったのも、私の存在のせいだから……」
私、今自分がどうすればいいのかがわからない…


