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…なんて早さだ…


黒いローブの男達はまるで足が無いかのようにスーッと遠ざかっていく。


「テラ!!!!離されるな!!」


テラの腹を蹴り、速度を上げる。


見失いでもしたら…
考えるだけでも恐ろしい。

もう二度と、花音と会えないかもしれない…


「っ…くそ…」


あいつらは一体なんなんです?ルチアの力は人間だけでなく魔物でさえ欲するという事か…



「嫌になりますね…」


人間には決して何も出来ない。人間には立ち入る権利すらないと言われているようだ…



―スーッ…


「!!!!?」


辺りが突然霧に包まれた。やむおえず立ち止まる。


「今度は何だというんです…?足止めくらっている場合ではないというのに…」


辺りを見渡しても、さらに霧が深まるばかりだ。


「テラ、お前でも分からないか?」

「ヒ、ヒィィンッ」


テラはブルブルと首を振ったように見える。


そうか、テラにも分からないとなると…


「ただの霧ではないですね」



テラは頭がいい。
嵐だろうが霧だろうが問題無いはずだが…


「こんなところで立ち止まるわけにはいかないというのに…」


あのお馬鹿さんの事だから、目が覚めた時に俺達がいなければきっと泣いてしまう。


「こんなところで…」


俺は剣を握り何か剣先に当たるものはないかを調べる。


うまくいけば木を目印に前へ進めるかもしれない。


さっきまで走っていた道は、森の中に無理矢理作った道だ。


木と木の間に道がある。
なら、その木を辿っていけばいい…



テラの手綱を引きながら近場の木を探す。


「必ず…必ず迎えに…」


そう心に強く決意し、また一歩を踏み出した。