ルチア―願いを叶える者



『さぁ、お帰り。これ以上この時空にいては、帰れなくなるわ』

「でも…あなたを一人にしたくない…」



そう言えば、少女は目を見開いた。


それから優しい笑みを浮かべた。


『ありがとう…。優しくて可愛い女の子。あなたに出会えて良かった…』


そう言って私の頭を撫でた。


『どうかもう迷わぬように…。私にもう力は使えないけれど、祈るわ…あなたの帰るべき場所に帰れるように…』


少女は私の手を握り、祈りを捧げた。


その瞬間ー…


―グワンッ


時空が歪んだ。


あぁ…また私は……


少女を見つめる。
この人を救えないのだろうか…


どうして私は無力なの…?



『どうか、あなたは幸せに…。美しい魂の持ち主…』


―グワンッ


「そんなっ…あなたを救いたいのにっ…!!!!!」


最後に見えたのは少女の笑顔と涙。

最後に聞こえたのは、雨音だった。