『…あ…あなたは…』
少女はゆっくりと私に近づいた。
私はただ立ち尽くす。
なんだか頭が重い。
『何故ルカの魂を…』
ルカ……?
今、ルカって言った?
『……そんなわけないわよね…。あの人が死んでいるはずないもの。絶対…生きてるわ…』
まるで自分に言い聞かせるように少女は呟く。
ルカって言ったのは気のせいだったのかな…?
きっとそうだ。
さっきルカに会ったせいだ…
『あなた、この時とは異なる時をもっているわね』
「え…?」
もしかして、私が違う時空から来たのを知ってるのかな?
確か、ルカも気付いてたっけ…
でもどうして……
『迷ってしまったの?よりにもよってこんな所に…』
「こんな所…」
『えぇ、ここは牢獄…。逃げる事も出来ない永遠の地獄…』
少女の目は悲しみを帯びていた。
「そんな…。なら私があなたを助ける!!一緒にここから逃げよう!!」
ルチアの力を使えば、この人を助けられるかもしれない!!
『…無理よ…。私はここから出られない。私の兄が、この城に捕らえられているの』
「なら、お兄さんを助けて…」
『無理よ…。この帝国ガルディアの国王は、代々命従(メイジュウ)の力を受け継いでいるの』
「命従…の力……?」
聞き慣れない言葉に私は首を傾げる。
『100年前のルチアが帝国ガルディアに忠誠の証として与えた人ならざる力…』
ルチアが与えた力…
ルチアはそんな事まで出来てしまうの…?
『人を、意志なく従えてしまう恐ろしい力よ…。兄も、私も、その力によって力を使う事を禁じられている』
私も…って……
「あなたにも特別な力があるの?」
『…そうね、望んでもいなかった力があるわ…』
少女は悲しげに笑った。
なんでかな…
この人が悲しい顔をすると、私も悲しい。
―ザアアアアッ
『あら、雨が降ってきたみたいね…』
牢獄の中でも、雨の音が聞こえる。
その雨音が、さらにこの場所の静けさを物語っていた。
「あなたはずっと一人なの…?」
何故か、私はそんな事を聞いていた。
だって、ずっと一人なんて悲しい。


