「ルカ、どうかしたのか?」
ただ立ち尽くしている僕を不思議に思ったのか、シェアが声をかけてきた。
「いや、すまない…」
「なんで謝る」
シェアは困ったように僕を見た。
「心配かけたかと思って」
「まぁ心配はしたがな」
と言って何も聞いてこない。シェアはいつもそうだ。
僕が話すまで待っていてくれる。
「ありがとう…シェア」
「何がだ」
「いろいろだよ」
なんだそれはとシェアは笑った。
やっぱり彼は王なんだ。
彼にはその素質がある。
民を導き、幸せにする力が…
「シェア、君と出会って旅をしてわかった事がある」
「お、なんだ?」
「この世界は醜く、欲に溢れているけれど…」
特別な力を欲し、いつだって多くを求める人間だけれど…
「森を守り、生を育み、町や国をつくるのもまた…人なんだ」
その理に、人ならざる力が関与してはいけない。
「どうやら、恐れていた事が起きてしまったみたいだ」
あの少女が僕を知り、未来の僕が彼女をルチアに選んだのなら…
「ルリが戦乱に関わっているのが明確になった」
「お前の妹だろう!?何故…」
「ルリが望んで力を使ったとは思えない。おそらく…」
そう、最悪な未来……
「妹は、残虐な人間の元に降臨してしまったのだな…」
シェアは気付いたのか、険しい表情をした。


